俳句の世界の話をすこし。
今日某出版社の俳句大賞の受賞式があったのでちょっと覗いてきた。
選ばれたのは、照井翠『龍宮』。照井翠は昭和37年生まれ。釜石高校の教師で、東日本大震災に実際に被災した。実体験者の句集と言うことで評判を呼んだ。私も一読したが迫真に迫り息をのむ句が多い。
・泥の底繭のごとくに嬰と母
・双子なら同じ死顔桃の花
・朧夜の首が体を呼んでをり
・春の星こんなに人が死んだのか
・穴といふ穴に人間石榴の実
・津波より生きて還るや黒き尿
・春昼の冷蔵庫より黒き汁
・三・一一神はゐないかとても小さい
・唇を噛み切りて咲く椿かな
・撫子のしら骨となり帰りけり
・朝顔の遥かなものへ捲かんとす
・泥の底繭のごとくに嬰と母
などは、何時までも語り継がれるだろう。
ちょっとこぼれ話を。
「蛇笏賞」という一応俳壇で最高とされる賞がある。今年度の受賞作品としてこの句集はノミネートされ、最後まで残ったが、結局、金子兜太の「まだ時期尚早」の一言で落ちた。これが一部で激しい反発を呼んだらしい。「時期尚早」など文学者の言葉ではない、官僚の言葉だ、と。 笑うべし、かっての前衛俳人、老害というべきか。
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