もう、師走の句鑑賞になってしまったなあ。早いものだ。古希もあっという間に通り過ぎたし。
・冬支度豆粒ほどの火種から
火種といえば、煙管に火を継ぐとき、掌に一時的に前の火種を乗せておく芸当を見せられて子供心に感心したことがあったな。さて、冬支度の始まり、切っ掛けを言っているのかな。何となく腰が重そうな。
・小咄の火鉢一つに集めけり
火鉢を囲んでボソボソと世間話をしている風景か。
・革ジャンと鍵ジャラジャラと車椅子
頭はリーゼントか。この或る種の美学にとらわれる青年は何時の時代にも必ずいるね。
車椅子か。どうしたのだろう。
・月冴ゆる欠けた英字のビスケット
最近そのビスケット見掛けないなあ。
・行き着ひた防空壕跡雪しまき
「着きた」の音便で「着いた」だね。拙句の「~連隊跡しぐれ」と同じ気分か。
先年、褌子氏の案内で、館山の戦跡を訪ねたことがあった。首都防御という位置づけか、規模が大きかった。
・新雪の中に小銭を落しけり
何げない日常風景だけれど、なにか切ないね。これが特選。
・テロメアの長さ測りて冬の空
テロメア―染色体の末端にあって、細胞分裂回数、つまり寿命を記録する部分か。さて神は余命幾許と言い給うか。
・太陽に彗星呑まれ賀状書く
彗星の消失が何か日常の宇宙性を感じさせたりするね。先日句会で〈日の裏に彗星消えて日短か〉を出したが、反応はゼロだった。
・自転する星に生れて雪だるま
雪だるまは土やほこりで妙に縞模様を形成する。そう自転しているんだね、だるまも。
・四十ワット突然切れて大晦日
前回も四十ワット句があった。余程身近な、多分トイレではないかと思うが。年の最後の最後に切れたという、幕切れにしては些か出来すぎの暗転ではあるが、まあ気を取り直して行きましょう。
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