・冷酒や存へ卒寿の喉仏
存へは何と読むのですか?
・降り出しはいろいろ匂ふ夏の雨
なるほどねえ。たしかにそういわれれば
・アマリリス右脳の夜の襞の中
「夜」を「昼」にすると一句の味わいが千分の一くらいになる。襞を皺にすると印象が百分の一くらいになってしまうし、アマリリスをクレマチスにすると句の諧謔が台無しになる。理屈っぽい逐語的な左脳に比べて、アマリリスのおおらかで、おおざっぱな雰囲気がなんともよい。。右脳で俯瞰しどんどん歩いて左脳でちょいと立ち止まり地図をみるのが粋な生き方らしいが。右も左も襞も皺もないとどう生きればいいのか。深い苦脳
・満州の野を駆け抜けし跣足かな
そういう経歴の持ち主だったのですか故人は
・夏蝶や軍人手帳の高値札
そういうものが柩のなかに入っていたのですか。
いぜん、あるひとの葬儀にいったら柩のなかに大学時代のゼミの古ぼけたノートが入っていた。びっしり鉛筆で書き込みがしてある。奥さんが、このノートが主人の出発点だと思って…と言っていた。
・卯の花腐し叔父が鶏絞めに来る
少年のころの記憶?
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松本清張の『古代史疑』をぱらぱらと読んだ。
日本古代史に関する最古の資料とされている『魏志倭人伝』について日本人が鎌倉室町のころから現代にいたるまで、どう読み解こうとしてきたのかをざっと全部俯瞰して論点難点を整理し、発掘された考古資料まで駆使して邪馬台国と卑弥呼について自説を開陳している。推理小説の大家だけに四方八方から切り込む深い推察が読者をうならせる。二世紀後半から三世紀前半の古代日本。霧がかかっていてよくみえない。いぜん、玄界灘にのぞむ糸島半島前原の古代史博物館を訪ねたことがある。魏使はこの伊都国にまで対馬、壱岐をへて来たことは間違いない。そこからが魏使がどう歩いたのか、本当に歩いたのか…なんとも難しい。
とにかく清張は右脳も左脳もおそろしく襞が深い。
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