2013年11月3日日曜日

猫跨ぎ句を鑑賞しつつ思うこといろいろ・・褌子

・双腕に室津港あり酔芙蓉
   室津の湊の地形は知らないが、双腕とあるから舞鶴や佐世保みたいに馬蹄形の陸に囲まれた良港なのかもしれない。遣唐使船と酔芙蓉があう。酔芙蓉は、朝のうちは純白、午後には淡い紅色、夕方から夜にかけては紅色に。酒を飲むと顔色がだんだんと赤みを帯びるのに似ていることからこの名がついた。蓮=Lotusは中国では芙蓉と書くから間違えやすい。
・大伽藍のいくつ亡びし稲の花
    福原京跡とかどこかで詠んだ句に違いないが、――平城京跡にて詠める――とか前書きがあると助かります。
・下総の月夜に太るけむり茸
特選  
・医務室の耳の模型や毒茸
たしかに
・俎板の章魚引き剥がす秋の暮
タコ・蛸・鮹・章魚。吸盤が最後の抵抗をしている。奇っ怪な姿ながら、あの白身の刺身がたまらない。秋の暮れのわびしさが余命幾ばくもないタコの悲哀を強調した。準特選かな
・氷頭鱠ふるさと遠き噛み応へ
なんとなく借金ふみたおし釧路を追われた啄木を想起した。『啄木日記』というのは面白いらしい。夭折した天才ながら「釧路の幸江は馬鹿で始末に負えない。別れるのにほとほと手を焼いた女」なんて、ずいぶん正直に書いてある。天才歌人の愛人だったことを自慢していた幸江さんが、啄木没後この日記を読んで激怒。啄木をのろい続けて昭和四〇年だったか亡くなったと、道新で読んだ記憶がある。幸江さんの源氏名は小奴。 
じつは『啄木日記』を先日、三省堂書店で立ち読みしたが幸江さんとのポルノチックの個所がローマ字で書いてあった。
  小奴といひし女のやはらかき耳朶なども忘れがたかり
釧路には何と二十五も啄木の歌碑があるそうだ。 いちばん有名なのは幣舞橋ちかくの米本公園の
  しらしらと氷かがやき千鳥なく釧路の海の冬の月かな
リラの君とふたりで歌碑を訪ね歩きたかったなあ・・・

・秋冷や硝子断面海の色
    晩秋いや初冬か。空気がきんと冷えている

0 件のコメント:

コメントを投稿