しばし音信不通になっていた彼女の消息を探し当てたのは仁ちゃんだった。そしてその後もね。
さて、五月度仁句鑑賞。今日は当地は蒸し暑いくらいの気候。申し訳ないが風が心地よい。
・ ふらここや一往復にある記憶
ブランコに乗ってゆっくりと揺れている。自然に気持が過去へいざなわれるということであろう。繰り返しの動きのなかに、自分も人も自然も同じ事を繰り返すものだという感覚も仄見える。
・ 花冷や猫背で作る砂利の音
前書きにみるように、花冷えとはいえ如何にも寒いと思いながら歩いている。海岸か、神社の境内か。砂利の音が我が身に沁みるようだ。冴えないなあ。
・ 誉め言葉一つも無しに春の往く
冴えないことの極みみたいな句だなあ。このあと夏が急にやって来るから、まあ気を確かに。
・ SLや三歳の春総身に
・ 兄六つ弟いつつ苺かな
・ 泣き笑ひ出来て嬰児風光る
孫三句。子供は実に屈託がない。寒ければ寒いなりに元気に飛び回る。
うちの孫も乗り物に目がない。一時期、踏切のそばで通過する電車をそれこそ総身に感動を顕して見入っていた。動物園の動物なんかにはさっぱり関心を示さない。
・ 青き踏む問わず語りの岬かな
岬がしばしば登場するが、いつもの散策コースから見えるお馴染みの風景なのだろうか。
ようやく生えそろった春草を踏みながらのそぞろ歩きの向こうにいつもの岬が見える。早春の感動とは些か遠い屈託が感じられる。
・ アスパラの曲った先から五月晴
こういう近景、遠景の取り合わせに、なにか心情をこめているのだろうが、うむ、あまり跳ねた感じはしないねえ。そういう気分がよく見える。
・ 緞帳の下りた連獅子リラの花
リラの花に舞い終えた後の連獅子を見たのだろう。
・ 釉薬の艶の絡みて新茶くむ
新茶という季語はさわやかな初夏のまろやかさという何と言うことのないもの。淹れた茶器の肌合いを愛でて居るのだろう。「絡みて」が何か引っかかりを感じさせるが、本人しか判らない。
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