・伝説になると暗示し夏尽きぬ
今夏の出来事で伝説化するものはなにかと考える。漂流する政治、孤島を巡っての領有権争い、脱原発論議の高まり、この辺りかな。
・占領の記憶薄れて九月かな
室蘭に上陸し道央目がけ国道を延々と走り行く進駐軍の車列。サングラスの兵士。駅前のダンスホールのジャズ。勿論、子供には禁断の場所であったが。
・葛の花名無しのごんべ甘噛みす
昔の記憶かな。良い匂いのする葛の花。噛んだ?
・常陸よりなほ奥つ方いなびかり
まだ鎮まる気配もない。瀕死の巨大な蛸がオクビと汚穢をまき散らす。特選
・コッペパン何もつけずに秋の空
給食でコッペパンが出たが、暫くしてサイコロ状のバターが付いた。長期欠席の級友のこちこちになったパンを何本も帰りに持たされた。先生は何を思ったのかな。食べ物を捨てるという発想は誰にもなかった時代だった。
・昨夜の雨瓦礫に滲みてちちろ鳴く
こころはまだ片付かぬ被災地の瓦礫か。準特選
・漣やとんとんとんと月を切る
とんとんとんがどうだろうか。そういう音のイメージはない方がと思うが。これは見方それぞれで。
・大仏の臍のあたりの野分かな
野分に晒されるのは露仏で鎌倉の大仏さんか。でも臍は衣に隠れているようだ。函館の露仏かな。俳諧味。
・お代りの脱脂粉乳秋深し
まずい代名詞で脱脂粉乳は語られるが、美味とは言わぬが、嫌いではなかったね。そう私もお代わりした。
・とんぼうやこの海峡渡れるの
てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行ったという詩があったなあ。この時期、小動物に目が行くね。
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