パーキンソン病か。 知ってはいたが、はっきりとご本人の口からうかがうと、うーん言葉がない。 ありきたりの言葉を発しても、そのうすっぺらさに自分で参ってしまい、結局何もいえなくなり、立ち往生する。言葉は無力だなあ。 すまん、われながら不細工だ。ただ、ただ一日一日を生きることを味わいつくして、過ごしていってほしいと願う。ホントにそう思う。
しかし、ほっとするのは、仁ちゃんの俳句の世界だ。感性の世界が、豊かに、春の海みたいに広がっていることを感じ、はげまされます。しろうとが心に残った句を僭越ながら・・・
伝説になると暗示し夏尽きぬ・・・ いや今年の夏はひどかった。 こちらでは「脳幹のとけ行くほどの暑さかな。」である。伝説になるだろう。
占領の記憶薄れて九月かな・・・・ あの戦争、「戦中」を思い出すのか「敗戦」を思い出すのか、それとも「占領」を思い出すのか。
敗戦が過ぎて占領になったことと、八月が九月になったことが何となくうまく重なっている。 おいらの記憶の最初は3歳の時におふくろの背中でみた静岡大空襲である。
常陸よりなほ奥つ方いなびかり・・・・ 3.11を連想する。いなびかりの下、ひとの心の底にあるのは地底火山脈だ。 いなびかりの語感がすき。ガラスの破片のような緊迫感がある。
コッペパン何もつけずに秋の空・・・・・ コッペパン、なつかしいなあ。最近のパン屋はフランス語だかイタリア語だかあふれていて、おじさんにはよくわからん。
昨夜の雨瓦礫に滲みてちちろ鳴く・・・・ 命のいとおしさ。そこにめをむける作者の目のあたたかさ。
漣やとんとんとんと月を切る・・・・・ これいい。トントントンのリズムが漣にぴったり。 気が付いていて見ていなかった光景 特選
大仏の臍のあたりの野分かな・・・・ ちと光景がうまくうかんでこない
お代りの脱脂粉乳秋深し・・・・・ 脱脂粉乳ということばがわかる世代もへった。まずかったが、おかわりしたのだ。あれからずいぶん遠くまできた。今や宇宙は秋。もうすこしだ。雪はまだこない。
とんぼうやこの海峡渡れるの・・・・やさしい。とんぼうと海峡、前句の瓦礫とちちろ。ちいさいいのちを扱うのがうまいなあ。組み合わせて準特選。
しかし、ことばは無力だなあ。無力を知っていることはいい。無力だからこそ、ひとは何かとつながりたくって、しぼりだすように言葉をはくのだろう。
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