2013年2月26日火曜日

墨東綺譚・・・・褌子

   さいきん、時々、頭重感とめまいによる浮遊感がする。国兼さんの例もあるので近所の脳神経外科でCTスキャンをとったが何でもないという。そこで昨日、千葉労災病院の神経内科に紹介状もって行った。混んでいるので驚いた。とつぜん医者に「きょうは何日ですか」とか「けさ何を食べましたか」といわれて一瞬思い出せなかった。MRIとるのは三月半ばになってしまったが、とりあえず脳梗塞の可能性は低いといわれてひと安心。では、あたまんなかの何が原因だという思いもある。
   猫跨ぎさんが荷風の日記『断腸亭日乗』を読んでいるらしいのに刺激されたのか、病院での二時半もの待ち時間で永井荷風の短編『墨東綺譚』を読んだ。(墨にはさんずいがつくがパソコンででてこない)大正から昭和のはじめころの下町の風俗や人情を活写していて、わかりやすい名文。
   荷風は氏も育ちもいいひとらしいが、娼妓というもっとも底辺にいきる女性達の生活にいりびたり、彼女たちからこよなく愛されたひとらしい。江戸趣味とか花柳趣味を生涯つらぬいて権力とか名誉欲とかと無縁、まったく立ち位置変えずの生き方。昭和11年脱稿とあるから、日本が刻々戦争へと向かう時期にこんなことを赤裸々に告白した作品だと思うと感慨がある。
  文庫本の中村光夫の解説では明治の高級官僚だった父に随分反抗したらしい。こういうところは『暗夜行路』の志賀直哉に似ていると思った。ちなみに直哉の父は足尾鉱毒事件の古河市兵衛に肩入れした人物。

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