2013年2月4日月曜日

おいてけ堀・・・猫跨ぎ

  昨日ヨーカドーへ買い物に行ったら、食品売場の一角で人だかりしている。何かと思いきや恵方巻とかいう太い海苔巻きに群がっているらしい。今年の恵方は南西とかで、そっちを向いて一本のまま食べるとか。関西の方の風習だったらしいが、目ざとくこちらでも流行らせようとしているのだろう。何より姿、形が見苦しいし、こんな馬鹿な習慣に簡単に乗る方も乗る方だ。世はかくも移ろいやすい。

  最近、志ん生や円生のCDを聴きながら寝ている。途中で寝入るので最後まで聞いていない。他愛のない噺ばかりで布団のなかで笑っているが、志ん生の「おいてけ堀」という変なのがある。聞いていて気分が悪くなる異様な内容だ。
釣りをして釣果を持って帰る後から「おいてけ、おいてけ」と声がして、気味悪く置いて逃げる・・・というのはほんのマクラで、噺はとんでもない展開となる。
〈千五百石の直参の娘が、生後疱瘡を病み、そのあと事故で顔に熱湯をかぶり醜くなる。それが原因で母親が他界し、殿様は吉原の花魁を見受けし後妻とし、醜い娘をいじめる。殿様にかわいがられた若者が屋敷で暮らすことになるが、寒い夜に奥様に娘の部屋でお寝よと言われ、寝てしまう。子供ができてしまって、浅草の叔父さんの元へ駆け落ちするが、しまいには娘を捨てて消えてしまう。娘は恨みを残して自殺する。その後、娘の幽霊が出るようになった。〉

いやな噺である。女性を醜い女とあざ笑う台詞が連発。気分が悪くなる。怪談噺に括られるのだろううが、最後にどんでん返しがあると思いきや、全く救いがない。
しかしひと昔前まで、大衆はげらげら笑って聞いていたのだ。不幸、不運の末、転落していった少女の姿をあざ笑う嗜虐性も、落語は持っていたというべきか。今これを高座に上げたら、人権団体から抗議殺到だろう。しかしさて、どちらが人間性を抉っているか。正邪ではない。

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