小泉信三は毎年一度は料亭に古今亭志ん生を招いて暫時もてなし、「志ん生君、さあ、やってくれたまえ」と言って志ん生が唄う「大津絵」を聴いては涙を流し、ハンカチで目を拭ったという。火消しの亭主を誇りに思い、火事場に出かけた亭主の無事を祈る女房の心根を思ってのこと。「大津絵」とは、宿場町の大津で売られていた土産の絵画。これが厄除けにもなり、また俗曲としても流行したらしい。
知らせの半鐘がジャンと鳴りゃ
これさ女房わらじ出せ
刺子襦袢(さしこじゅばん)に火事頭巾(かじずきん)
四十八組おいおいと
お掛り衆の下知(げち)をうけ
出て行きゃ女房その後で
うがい手洗(ちょうず)にその身をきよめ
今宵ウチの人になァ
怪我のないよう
南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)
清正公菩薩(せいしょうこうぼさつ)
ありゃりゃんリュウの掛け声で
勇みゆく
ほんにお前はままならぬ
もしも生まれたこの子が男の子なら
お前の商売させやせぬぞえ
罪じゃもの
YouTube で志ん生が唄っているのを聞くこと出来る。
こういう世界は、もうなくなってしまったなあと思いながら聞いている。
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