2013年9月4日水曜日

室津・・・猫跨ぎ

  ちょっと留守にしていたら昔話に花が咲いている。もう何というか、かなり朧の彼方だね。余り覚えていない。たまにそのころの夢をみるが、大学の研究と会社の仕事のあれこれがごっちゃになって、時間に追われている割りにははかばかしく進捗せず、胸苦しい中味ばかりだ。あまり夢見がよくない。何故かなあ、良いこともちょっとはあったんだけれど、さっぱり現れない。目が覚めて、そうかみんな終わってしまったんだなあと、深い開放感と、ほろ苦さに襲われる。
 俳句の関係で岡山に行ってきた。終わってから、室津へ。播磨灘に面する小漁村。しかし奈良時代には播磨五泊の一つの要港。遣唐使船も碇泊。中世は倭寇の根拠地。江戸時代は瀬戸内海航路の寄港地で殷賑をきわめたという。遊郭が沢山あったことでも有名。
いまは何も残っていない。静まりかえった寒村。小高い岡に登りぼんやりと眺めた。港の規模ははなはだ小さい。まことに可愛らしい船だまりでしかない。こんなところから遣唐使船がでたのか。清盛も寄港したという。岬に万葉の歌人山部赤人の歌碑があった。
  帰りしな雨が降ってきた。バスに時間があるので、「きむらや」という割烹旅館に飛び込んでビールだけ注文。もしやと思って、主人に司馬遼太郎のことを聞くと、「そうなんです、三泊されました」と。『街道をゆく』の取材に来ている。「あの方は、魚が駄目なんです。肉しか召し上がらないので、往生しました」。へー、聞いてみなけりゃ判らない。そんなことひと言も書いていなかった。

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