日本近代文学館昭和50年発行の『漱石文学館』二三点二五冊をそっくりいただいた。
明治三〇年代から、橋口五葉、津田楓風、漱石自身の装丁による絢爛豪華な漱石本の原形をとどめている初版本をすべて集めてつぶれた活字も当時そのまま複刻したもの。天金のかすれようもそのままという凝りよう。(昭和40年発行の岩波の漱石全集をもらうよりもはるかにうれしい)
『木屑録』という二二歳の高等中学時代に房総に旅行したときの記録も毛筆のまま複刻和装されている。 『木屑録』は漱石が他人に見せることを目的に書いた最初のものらしい。正岡子規に読んでもらうことを目的として書かれ、子規から刺激され書いたものであることが巻尾の「明治二十二年十月獺祭漁夫常規謹んで識す」の批評でわかる。獺祭は子規のペンネーム。若き漱石の漢詩や俳句三句を同じく明治維新の前年生まれの漱石と同年の子規が朱書で直しているのも面白い。
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