ノウゼンカズラについては猫跨ぎさんと全く同じ経験をしている。
十年くらい前に樹高2メールくらいの山椿の幹にそっと沿わせて植えたら、数年で椿の葉全体を覆いかくすほどになってしまい、直径5センチもの蛇の胴体みたいに椿の幹にがっしりとへばりついている。植えた当初は可憐なそぶりだったが、いつのまにやら古女房が完全に亭主を尻に敷いている感。あまりに亭主がかわいそうなのでノウゼンのわずかな小枝だけ残してばっさりと切り落とした。ざまあみろだ。
近所のノウゼンには上品なオレンジ色のものもあるが、わがやのは毒々しい赤い花をこれ見よがしに咲かすのも気に入らない。
凌霄花の夜まで赤きは人嫌い 望月英男
凌霄やギリシャに母を殺めたる 矢島渚男
・花冷や印画紙に貌現れる
貌は、かおと読むのだろうがよくわからない。
・菜の花や帽子目深にヴァン・ゴッホ
イーゼルかついで画板、絵の具もって、とぼとぼと菜の花畑からゴッホが下ってくる景がありありとみえる。沈む寸前の春の夕陽がかっと菜の花畑を照らしている。次第にゴッホの姿がシルエットになっていくのだ。
昨年、オルセーでゴッホの自画像みたのが忘れられない。
特選
・階段の軋んで四月はじまりぬ
しんとした時間と空間。
・犀の目に放蕩の色遅ざくら
犀の目は妙に小さく決して気品のある目ではない。放蕩無頼と遅桜とは妙なセットだなあ。
・高野山宿坊朧夜の胡麻豆腐
思い出します。寒い晩だった。あつい般若湯がうまかった。みんなで風呂に入ったなあ。
・世界地図の平野は緑鳥雲に
世界地図をみながら冬鳥がどこまで飛んでいったのか瞑想している
テレビで見たヒマラヤを飛ぶ鶴の映像には感動したなあ
・つまらなき景色北窓開いても
そうですか
・鳥帰る茶箪笥のべこ首を振り
年々歳々
・象の来てまた遠ざかり春深む
象というとつい猛々しいアフリカ象をおもってしまうので春深むとつながらない。いや動物園の景かな。
春ひとり槍投げてまた槍に歩みよる 能村登四郎 を突然おもいだした。
・葉桜やゾーリンゲンの刃の毀れ
なんとはなしにアンニュイを感ずる。ひげそりやべこ首や北窓や世界地図で…俳句の世界は縦横無碍面白いんだね。
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