・ 風呂敷の鹿の子絞りや水の春
水の春とはきれいな季語だな。風呂敷と鹿の子絞り…そんな時代もあったんだね。溝口健二の映画の一場面。
・ 薄氷の向こうに地球歪みけり
氷がレンズになっているということか。地球歪むがおおげさすぎるが
・ 一分前発車ベル鳴る蕗の薹
ふきのとうに意外感。時間的なせわしなさに対して、うす緑のふきのとうののんびり感がまことによろしい。
・ 鰊群来一粒ごとの宇宙かな
鰊群来を「にしんくき」だね。一粒ごとの宇宙かな、に一工夫ほしい。
・ バス停に今置いてきた春の夜
バス停での瞬間を読むとすれば「いま置いてきた」とは変だ。
季語をいま置いてきた…というのはおかしいのではないか。私見ですが。
バスを待ち大路の春をうたがはず 石田波郷
このばあいはゆったりとした春の時間が流れている。
・ 春の土五感の地図を塗り替えて
雪のしたから春の黒々とした土がみえてくる瞬間。五感の地図を塗り替えてはやや技巧的。
・ 囀りや右から左アラビア語
面白い。トルコ語でもポルトガル語でもよろしい。右から左にもう一ひねりほしいが
ところでカダフィはどこへ逃げていくのかな。この男はしぶとい奴でねばりそう。しかし同胞を銃殺するとはとんでもない奴だ
・ 道糸を二号に決めて春の雪
春先の魚釣りは楽しい。岩魚もまだ小さいが一冬腹をすかせて飛びついてくる。痛快
・ 冴返る永字八法なぞりけり
「永字八法」という誠に古風な言葉をひっぱりだしてきた豊かな学識に脱帽。
「永字八法」の語感がなんともよい。だんぜん特選。
・ 蜆船頁をめくる閲覧者
シジミ船とiPhoneだかiPadだかを無理矢理鉢合わせにしちゃった。異質すぎて二物衝撃がおきていない。
・・・・それにしても昨年の宍道湖のシジミはあまりに小さく、せんだっての逸徳さんとよった青森の飲み屋での十三湖のシジミは大きさは中くらいながら、なんともいい出汁がでていた。
By the way 今回の仁句は身辺の小世界から地球だの宇宙だのまで空間的な拡がりがある。さらに無限の過去から無限の未来への時間的な拡がりが一句にでてくるとますます面白くなる。いっそうの精進を期待したい。
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