■仁句十句について
・ 自転車の行く先雀隠れかな
雀隠れとは面白い春の季語だ。雪が消え自転車の季節になった。
・ 理学部の正面玄関楡の花
懐かしいね。あの煉瓦の理学部本館じつになつかしい。いま北大博物館になっている
・ ダーウィンの易しい講義野焼かな
ダーウィンと野焼き。妙な取り合わせだが。
・ 朝市の身欠き鰊のこぼれけり
みがきにしんの昆布巻きが食いたいな。函館の朝市の景
・ 蒲公英のわたげ賛美歌謳ひけり
さらりと読んだ佳句。あのやさしいわたげには確かにそんな雰囲気がある。
・ くちづけの予感をさせてリラの花
リラの花に接吻がなったのかならなかったのか…青春も遠くなった
・ ため口のつひ出てしまひ花は葉に
屈託がでている。憂鬱などお構いなしに時は過ぎてゆくのだ。
おや「ためいき」でなく「ため口」であったか…
・ 半跏趺坐して柏餅食べにけり
ひざをくんでいる優しい菩薩さまのそばで柏餅を食っている幸せ。
・ デジタル化されて涅槃図薄暑かな
涅槃会は春の季語なんだね。薄暑は夏の季語だがそんなことはどうでもよい。
デジタル化された涅槃図がじつに面白い
・ 青柳町今も坂なす五月かな
函館に青柳町があるのか。海港の坂のまちにも春がきたのだ
■猫跨ぎさんリラ忌三句について
・蟻の来て何処かへ去れり余震なほ
震災・津波・放射能と人間どもの大騒ぎのうちに二ヶ月過ぎた。それでもまた悠久の時は何事もなかったか のように過ぎてゆくのだ。おや、また余震だ。ちくしょう
・弥生尽濡れ新聞の生臭き
津波のがれきの景が目に浮かんだ。ボランティアから帰ってきた人の話では見渡すかぎりの瓦礫の山でホ コリがひどく臭いもあって石綿対策からも濡れマスクがはなせないといっていた
・悲しみのことがら多きリラ忌かな
3月11日午後2時46分まで元気に生きていた人が突然この世にもういない。
人間の一生は案外平等だなんて思っていたが、やはり不条理きわまりない
老子「天地に仁なし」 未来は決して予知できず
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