2014年1月21日火曜日

新春の読書・・・ 褌子

   ソウルの安重根記念館は私も行きました。伊藤博文が安重根に暗殺されたハルピン駅のホームには、タイルが特別に埋め込んであっただけだった。処刑された旅順の刑務所も行ったことがあるが、日本人看守が死刑囚安重根の高潔な人柄に惚れ込んで深い交流があったらしく、この看守の郷里の岩手県栗駒町には日韓親善をうたった安重根記念碑があるという。実は三月にソウルに行って李朝の明成皇后暗殺記念碑や西大門刑務所博物館、安重根記念館とか再訪してくることになっている。
 二月なかばにはボルネオに行く。数年前に北ベトナムの棚田を見に行ったら中国系マレーシア人夫婦と親しくなった。この夫婦が昨年日本にやってきて日光戦場ヶ原など案内したら、こんどはボルネオに連れて行ってくれるという。クアラルンプールからコタキナバルまで飛行機で一時間弱。ボルネオ最高峰のキナバル山に登る元気はもう全くない(二泊三日の山中泊が必要)。山崎朋子『サンダカン八番娼館』で有名なサンダカンにも行く時間がないのが残念。
サンダカンには日本人からゆきさんの墓が祖国日本に背を向けてたくさん建っているが行ってきたある女性にきいたら朽ち果てつつあるという。
 マレーシアを舞台にした小説を読もうと思い、女房が図書館から松本清張『熱い絹』を借りてきた。マレー半島の中部にキャメロンハイランドという高原があって静岡みたいなきれいな茶畑がサカイ族に栽培されているのだそうだ。マレーの虎といわれた山下奉文将軍がマレー半島を一挙に南下してシンガポールを攻略したさいに静岡連隊から逃亡兵がでて…という設定でなかなか面白かった。
  児島襄『戦艦大和』を読んでみた。戦艦大和の建艦から最期までを主砲の村田射撃手(奇跡的に生還した)に語らせながら丁寧に描いているが、吉村昭『戦艦武蔵』の戦争のむなしさが迫ってくる圧倒的な感動には比ぶべきもない。児島襄は日本海軍の艦隊がサンダカンなどの港に寄港すると、水兵たちがわれ先にと娼館へ走って順番を待つ場面を戦艦大和の射撃手に淡々と何事もなかったかのように語らせているが、『サンダカン八番娼館』を読んだことがあるだけに、何とも複雑ないやな気持ちになった。
 吉田満『戦艦大和』には沖縄への海上特攻に片道燃料で出撃する戦艦大和の水兵たちの戦闘前夜の心理と論争が描かれているというので、いま読み始めたところ。
 私は山崎豊子と山崎朋子を数年前まで同一作家だと思い込んでいた。山崎朋子は若いときに元恋人にナイフで顔を深く切られるという不幸にあった女性であるが、からゆきさんの過去をもつ天草の底辺に生きる女性たちのなかに飛び込んで『サンダカン八番娼館』を書き上げたことを著者の後書きで知った。若い女性に読んでほしい本だ。
  いっぽう山崎豊子は昨年亡くなったが、『大地の子』『二つの祖国』『沈まぬ太陽』『白い巨塔』『不毛地帯』などがあまりにも有名。新作では沖縄密約を暴いて有罪になった西山太吉記者を描いた『運命のひと』がある。西山さんは秘密保護法の危険性に警鐘乱打している。『不毛地帯』は山本薩夫監督の映画でみただけだが、仲代達矢演ずるモデルとされた瀬島龍三をやや美化しているように思った。『白い巨塔』は田宮二郎主演の映画でみた記憶がある。山崎豊子ほどスケールの大きな日本人女性作家は今後出てくるのかどうか。

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