2011年2月25日金曜日

函館通信136・・・粉浜の蜆・・・仁兵衛

 まったく新聞を読み、TVニュースを見てるだけで血圧が上がり疲れてしまうね。娘がニュージーランドに語学研修に行っていた時女房が遊びに行ったのがこの町で大変気に入っていたためショックが大きい。大聖堂の変わり果てた姿に涙を隠し切れない様だ。兎に角一人でも生存者が居ることを祈るしかない。

 先日の猫跨ぎさんの投句の一つに「ひとつづつ蜆を食ひて大男」というのがあった。たまたま俳句の雑誌に「粉浜(こはま)の蜆」というのを見つけたのでご紹介したい。蜆は古代から食べられていただろうが万葉集には巻六(九九七)に一首しか登場しないそうだ。
 ・ 住吉の粉浜のしじみ開けもみず隠りにのみや恋ひわたりなむ 
 (住吉の粉浜の蜆は蓋を開けないでこもっている。それではないが、私は思いを心に隠して、ずっと恋い続けるのであろうか)
 訳ももう一つ解らんが、聖武天皇が難波宮に行幸したとき(天平六年)の六首の内の一つだそうだ。詠み人知らず。
 蜆の口が閉じたままなのを観て秘めたる恋心に展開して行く・・・荒んだニュースばかりの現実をしばし離れて見ようではないか。十三湊や宍道湖では今でも蜆を採るときは梳連(じょれん)を使っているのかな。

  ・ 風呂敷の鹿の子絞りや水の春
  ・ 薄氷の向こうに地球歪みけり
  ・ 一分前発車ベル鳴る蕗の薹
  ・ 鰊群来一粒ごとの宇宙かな
  ・ バス停に今置いてきた春の夜
  ・ 春の土五感の地図を塗り替えて
  ・ 囀りや右から左アラビア語
  ・ 道糸を二号に決めて春の雪
  ・ 冴返る永字八法なぞりけり
  ・ 蜆船頁をめくる閲覧者

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