雪氷の五能線の旅から無事帰還して、新田次郎『アラスカ物語』をいっきに読んだ。
イヌイット(いわゆるエスキモー)については本多勝一や植村直己がすぐれたドキュメンタリーを残しているが、『アラスカ物語』も日本人と同じモンゴロイドの一種イヌイットの生活ぶりを語っていて実に面白い小説である。アメリカインディアンとイヌイットの棲み分けと対立関係の話も興味深い。
“エスキモー”という人口に膾炙している呼称は、インディアンがイヌイットにたいして「生肉を食らう野蛮なやつら」という蔑称であって、イヌイットは自らを“イヌイット”と自称している。
フランク安田という宮城県出身の次男坊が明治期にアラスカに渡り、イヌイットの女性と結婚し、鯨が捕れなくなり麻疹(はしか)にもおそわれるアラスカの「海岸イヌイット」をアラスカ内陸部に移住させて絶滅から救ったという実話を現地でたんねんに取材した小説である。
後半には主人公が金鉱山を発見した話もでてきて、チャップリンの『黄金狂』の場面を想起した。いぜん、アラスカのフェアバンクスというまちにオーロラをみにいって、全くみることができずがっかりしたことがあったが、フェアバンクスこそゴールドラッシュでできた町なのだとこの小説で知り、『アラスカ物語』を読んでから行くべきであったと後悔している。日米戦争中は日系としてアメリカ政府に強制収容所に隔離された話もでてくる。
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それにしてもと思うのは、五百万年まえのアフリカのルーシー嬢?の子孫たちが東へ東へとえんえんと歩き始めてユーラシア大陸からベーリング海峡をこえて、ついに南米の突端までいきついたはるかなるモンゴロイドの壮大な旅である。
わたしのご祖先様もナウマン象など追いかけて道草を食っているうちに氷河期がおわって海進で日本列島に取り残されたのであろう。
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