福島第一原発の汚染水の浄化処理システムがようやく本格稼働し、それを冷却水に再利用する「循環注水冷却」が実現した。3.11から4ヵ月になんなんとする。大きなメルクマールだと思うが、マスコミの扱いは地味だね。漏水した、すぐ止まった、どうする、どうする、と一面トップで大騒ぎしていたのに、うまく回り出すと何と言うことはない。
いわば出血は止まったわけで、あとは溜まった汚染水の処理を中心に、原子炉内の処理を進めていくということか。最初の水素爆発でまき散らした放射能物質への対応策が当面の大きな課題。いずれにせよ、峠にさしかかったという感じだ。
今日の朝刊に「ドイツの不安」というコラム記事が興味深い。ドイツは脱原発を決めた。11年後に原発全廃となる。福島第一原発事故を、ドイツは何故ここまでに強い危機感をもって受けとめたのか。1986年のチェルノブイリ事故で当時の西ドイツが被った放射能汚染の経験か。しかし、事故の汚染はドイツに限らなかったのに、最も過敏に反応した。
歴史を遡ると、「ドイツの不安」論に行き着くという。「ドイツ人の心の底には何か途方もないことが起こるのでは、という不安が常にくすぶっている」と。19世紀まで多くの小国家に分裂、戦争つづきで頻繁に生命が脅かされてきたドイツの固有の歴史。今は戦争の脅威は去ったが、その代わり「生存の不安の理由が原発に向けられている」という。「ドイツの不安」の背景にナチス時代の経験がある。「帝国でも技術でも巨大でなければならなかったナチスの破局から、原子力など巨大技術への不信が生まれた。大きな自然災害がないドイツにとって自然は脅威ではなくあくまで牧歌的なもの。原子力は自然の調和を破壊するものと受け止められている」という。これは一つの見方だが、いま、多くのドイツ人が急速な方針転換の理由を自らに問うている、と結んでいる。
同じ朝刊の一面に、日本では原発の見通しが立たないなかで、電力供給の不安から、生産の海外移転の動き、と警鐘を鳴らし始めている。韓国、中国が日本に取って代わるまたとないチャンスと捉えていると。 こういう論調がこれから急速に強まるだろう。
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