七月や鉄塔まはりの空き時間
今じつは仮の世を生きているのではないか…と思うことがある。
そんなとき、こういう句に出会うと救われる。
入道雲に向けてそびえ立つ鉄塔。「登るな!危険」の看板。ずっと向こうの次の鉄塔までたるんだ電線。揺れている。目にはみえないが確かに高圧電流が流れているの だ。遠くから間断なく聞こえてくるアブラゼミの騒音。
周辺の夏草のにおいのなかに汗をふきつつ立ちつくすと確かに生きている実感がわいてくるのだ。
鉄塔の先端付近、羽田に向かう飛行機がキラリと光った。
黒南風や破船かすかになまぐさし
浜にうち捨てられた破船から風にのってくるにおい
東北の寒村の景かも。
大南風鉄塔の影河に落ち
川面を涼風がかすかに
折られたる頁を元に半夏生
夏の屈託
枇杷熟るる夜や赤子のむし笑ひ
どういうわけか左幸子とか殿山泰治とか笠智衆とか乙羽信子をおもいだした
赤子にも思案顔あり凌霄花
めちゃくちゃ可愛い赤子のほうが大人を観察しているのかも。のうぜんかずらとの二物衝撃
背を向けて水飲む父よ遠花火
ときは昭和20年から30年頃。「飢餓海峡」だったか「砂の器」だったかしらん。
いや伊映画「自転車泥棒」
ビアジョッキに罅の一筋青江三奈
横浜ブルースだったか。懐かしいなあ…あの日あの頃
ホッピーというのがあったな。タコぶつも
疲れ鵜に分厚い空の降りてくる
空のほうから降りてくるのか。津波から復興ままならぬ東北の港
はまなすや遠く沖ゆく船ばかり
既視感がある。こういう景にあこがれているせいか。
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