2012年11月24日土曜日

『俳句いきなり入門』・・・褌子

  私は選挙で忙しくなってきたが、あいまをみて仁ちゃんが紹介している『俳句いきなり入門』を読んだ。面白かったので詳しい感想はゆっくり書きたい。とにかく、日本語というものの面白さ深さ。隠喩・比喩・換喩なども、違いがなんとなくわかった。一発芸の俳句と詩歌の違いを力説していて納得する。「だめな句は全部似ているが、いい句は一句一句違っている」などは「幸福な家庭はどこも似ているが、不幸な家庭はどの家もみな違っている」というアンナカレーニナを想起したりして楽しい。
  近所の若者に貴志祐介『黒い家』をすすめられた。ホラー小説というものをはじめて読んだが文章がうまくて違和感がない。中身はそんなに怖くもなかったが、こういう類の人間がいる現代社会はやっぱり怖い。最近の尼崎の連続殺人を想起してしまった。清張『霧の旗』のほうが理不尽な過剰すぎる報復に怖さを感じたが。わたしもいぜん、不登校の子供をかかえている母親の悩みをきいてやったところ、突然責任をとれ貴方を呪って死んでやると三年くらいつきまとわれたことがあった。
  筆力といえば津島祐子『火の山――山猿記』。太宰の娘が描く、甲州の母親の一家の五代にわたる長い長い物語。一家のいろんな人間が次々としゃべり出すのだが、時間と空間の配置がしっかりしていてちっとも混乱しない。大勢の人びとの生老病死のむこうに火の山、富士山がいつもそびえている。父太宰の情死事件も淡々と語っている。青森の太宰の実家のはなしもいろいろ出て来て、先年、逸徳さんと五能線旅行で訪問した斜陽館を思い出した。
  一家の物語といえば西武の提家をえがいた辻井喬『父の肖像』がいちおし。小説好きの女性にすすめたら絶賛していたが、いまは『火の山――山猿記』にはまっていて、曰く親戚身内に作家がいたら私は嫌だねえ…と電話してきた。

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