2012年11月20日火曜日

獺祭忌だっさいき・・・・褌子

    三陸旅行のドライバー菊池さんから手紙がきました。不況で苦労しているだけに、ほろほろ会の案内が本当に楽しくうれしかったそうです。
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・よもつひらさか蜩の鳴く時間です
    よもつ‐ひらさか【黄泉平坂】=現世と黄泉との境にあるという坂なのだそうだ。三途の川みたいなものか。ヒグラシは夕暮れにわびしく鳴くが、蜩の鳴く時間ですといいきったところが潔し。
・木の実落ち座敷すみずみまで深夜
    南部曲屋にも凩がふいていることだろう
・梅擬ポー詩集あつたので読む
    紅葉したウメモドキと幻想的なポー詩集のとりあわせが面白い
・謎の螺子一本残る夜寒かな
    分解して組み立てたら一本のネジが残ってしまった。ハテ
・雑炊に塩を振る夜や鳥渡る
    独り暮らしの景かも
・熊吊られ猟師(さつを)と同じ谷を見る
    特選。猟師を「さつを」というのか初めて知った。語感に縄文のかおりがする。猟師の物語というと「喜作新道」
・狭庭にも大いなる闇菊月夜
    陰翳礼讃あるいは雨月物語
・評判の金木犀は路地の奥
    いい薫りがしてきた。この先だ。
・鉄路にも程よき起伏吊し柿
    たしかにレールには起伏がある。つるし柿との配合秀逸
    やっと回復なった三陸鉄道を思い出した。
・耳掻を栞にしたる獺祭忌
    子規忌は9月19日だそうだ。明治35年に亡くなっているから生きていれば110才。われわれも70年生きたのだからそんなに古いひとではない。先人がみじかに感ずるのは加齢の効用。獺=カワウソは何となく愛嬌があって耳かきの栞と相性がいい。糸瓜忌だと子規の病苦を連想してしまう。芥川の河童忌とか、太宰の桜桃忌とか近くは司馬遼太郎の菜の花忌とか誰が決めて人口に膾炙し季語として定着するんだろうね。正岡子規は最もすぐれた日本人のひとりだと思う。



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