2012年7月5日木曜日

夏の猫句鑑賞・・・・褌子

・遠雷や手帳に覚えなき略記
   遠雷。手帳。遠近感、確かに生きているという実感あり。
   手帳に何でもメモする。いい習慣だ。すぐ忘れる。いい習慣だ。
・桃色の心臓模型夏兆す
   桃色が鮮やか。心臓模型に質量感あり。
質量の起源であるヒッグス素粒子がみつかってよかったね。17個全部そろった。
自重69キロの原因がわかった。めでたい弥栄
・六月や踊り場にある世界地図
   かなり古いくすんだ世界地図にちがいない。   
・夕暮のピーマンの種桶に浮き
   作句の骨法躍如。なぜか貧乏暮らしの一葉のほつれ髪が目にうかんだ。準準特選
・むつかしき貌してゴーヤぶら下がり
   ゴーヤって渋面でぶつぶつしていて苦みあり。準特選
・地べたから捩れてをりぬサルスベリ
これはうちの百日紅のことだ。
・手に残る氷の匂ひ炎天下
    氷のにほひ、しゅうるりありずむ。炎天下。まさに盛夏到来。
・日本海昏し大粒のさくらんぼ  
    日本海の色と南仏ではじめてみた地中海の色とはこんなに違うのかと驚いた。
    まさに昏しだね。松本清張『ゼロの焦点』能登の海も水上勉『越後つついし親知    らず』の海も昏しだ。つやつやと赤いサクランボとの対比鮮やか。
    桜散る海青ければ海に散る  のウルトラマリンの色とは違うのだ。
    蛇足ながら沈潜した寡黙な愚生の性格も日本海の海がつくったもの。
・撫で牛を平手で叩き盛夏かな
撫で牛っていうのか。俳味十分。特選である。
・ありふれた夏の夜なりグラス割れ
    夏の夜ってこんな感じだね。ゆんべビール用極薄コップ洗って割ったばかりです。


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