■□■□■□ 魯迅生誕130周年記念シンポに参加して ■□■□■□
ことしは辛亥革命から100年のとしである。
上海魯迅紀年館で開かれた魯迅生誕130周年のシンポジウムに参加した。
「沙飛研究・日本の会」の一員として招待されての参加である。
外国のシンポにしかも招待されての出席ははじめてだが、お国柄がでていて面白い。 紀年館がある魯迅公園そばの天鵞賓館ホテルの滞在費が紀年館もちであるばかりか、りっぱな装本の魯迅『中国小説史略』までいただいたのにはびっくり。
シンポでの発言者は中国人研究者がむろん大部分だが、日本語通訳がついていないので私には内容がさっぱりわからない。が、おおむねの発言は「現代中国の若者たちは偉大な魯迅を忘れている。いまこそ中国は魯迅精神にたちかえれ」というような内容のものがいちばん多かったらしい。
私は、魯迅が指導した木刻運動が旧中国の民衆の覚醒に貢献しただけでなく、山形の無着成恭の生活綴り方運動など戦後日本の版画教育運動にも大きな影響をあたえたという日本人研究者の発言に感銘をうけた。
新装なった紀年館をまわってみる。
魯迅を敬愛してやまなかった内山完造を記念する内山書店コーナーが一角をしめており、魯迅が留学した仙台の藤野先生や当時の東京などの写真もたくさん展示してある。魯迅の棺を鹿地亘らがはこぶ記録映画もはじめてみることができた。
反面、魯迅をかこんで談笑する中国の青年たちの群像が蝋人形にまでなって大きなスペースをとっているのに、この魯迅最晩年の貴重な写真の撮影者が沙飛であることを示すものが何もない。魯迅の遺影を撮ったのも沙飛なのにそのことにも全くふれられていない。
「沙飛研究・日本の会」の来住新平代表が、「魯迅と沙飛」と題して沙飛が撮影した写真の数々を紹介しながらていねいにレポートしたときには、壇上で司会をする紀年館の王館長がしきりにうなずいていたから、いずれ立派な沙飛コーナーが新設されることを期待したい。
二日間のシンポをおえて、紀年館をでて魯迅公園を散歩する。たくさんのお年寄りが歌ったり踊ったり太極拳や麻雀に興じている。公園入り口では、ひよこや子猫を大声で売っている。そばの北四川路の大通りを歩行者の間をぬって金持ちの高級外車が走りぬけてゆく。はるか遠くをのぞむと、けばけばしい広告看板で飾られた豪華なビル群もみえる。
もし魯迅や孫文がタイムスリップして今この場所に立ったら、何を語ることになるだろうか。
朝、ホテルの窓からみると、昔ながらの古ぼけた煉瓦の民家が高層マンションのビルのすきまに残っていて戸口から孫の手をひいてでてきたお婆さんが野菜や魚の行商のおばさんとにぎやかにやりとりをしている。こんど上海を訪ねるときにも、またこんな光景に出会えるといいのだが。
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