2013年3月12日火曜日

『恍惚の人』・・・褌子

   ちょっと昔の小説にはまっている。有吉佐和子『恍惚の人』を憮然とした思いでしかもぐいぐいと引き込まれて読了したところ。老人問題をこんなに深刻にあからさまに、しかも読者の苦笑をさそいながら書いた本はないのではないか。
  年食うといいこともあるんだという人がいるが、老いさらばえて頭が惚けるとはこういうことなのか…と暗澹たる気分になり一切の希望が無残に断たれるね。しかし小説の最後の最後になって、死ぬ直前の舅が二、三歳児のように可愛い爺さんになり糞尿まみれになって介護をやりとげた嫁とのあいだに温かいものが残る場面があって読者もすこし救われる。
  こんなすごい小説を書いた有吉佐和子自身はどんなふうに生を終えたのかと不謹慎だが調べると、昭和59年に心不全で自宅で急死している。53才だった。
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   いま三人くらい、六〇代後半の独りもんの男性の面倒みている。といっても話し相手になり、ふだんは近所からもらった野菜を届ける程度だが。ひとりは昔本欄にも書いた無籍のKさん。解離性健忘症が家裁で認められて就籍したが、糖尿病になって生活保護でやっと暮らしている。
  もう一人は奥さんに死なれて子どももいない一〇万円くらいの年金暮らしの近所のおじさん。奥さんの生命保険をだましとられて相談にきた。明日も頼まれて車で歯医者に送ってやる。工業高校でて有名企業のバレーボール部で活躍していた過去をもつが、いまは家賃二万円の崩れそうな貸家のゴミの山の中で寝ている。。
  三人目は北海道出身のおじさん。マンションにすんでいて清潔ずき。若い頃に奥さんと別れて以来ひとりぐらし。子どもがいるらしいが会ったことないという。新聞がポストにたまっていたらオレ死んでいるから市役所に電話してくれ。葬式代は50万円あると冷蔵庫に冷凍してある茶封筒をみせてくれた。

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