逸徳さんから五能線の最初の宿泊は深浦にするとのメールがはいった。
深浦、さみしげな名前だなあ。松本清張の殺人事件の舞台みたいな名前でいっぺんに気にいった。
パソコンで地図をみる。
五能線という能テンキな名前は津軽の五所川原と秋田県北の能代を結ぶから五能線なのである。
能代からすぐ日本海に出て延々と日本海沿いに北上し深浦を経て鰺ヶ沢経由で五所川原に着く。
インターネットの説明には「津軽西海岸のむき出しの赤土の大地が、白波の砕ける日本海に沈み込み、その海際に細く長く道が刻みつけられている。そんな少し寂しげでダイナミックな景観が続く津軽西海岸」とある。
少し寂しげ、では困る。荒涼とした雪の中の鉄道線路をとぼとぼと走る一両のディゼルカー。息で曇った窓ガラスを手拭いで拭きながら吹雪の日本海をいつまでもみつめる二人の男。でなくてはいけない。
逸徳さんがなぜ五能線にしたのかその必然性、その深い苦悩、呻吟、懊悩は深浦できくことになる。
去年のことだが鹿児島の知覧から指宿へのバスが乗客が三人くらいでまことに雰囲気がよかった。一泊5千円の指宿のホテルが誰も泊まってなくて、錦江湾にかかる月と漁り火を温泉からひとりでみた。大広間でおばあさんのお給仕でゆっくりと朝食。このおばあさんがじつは指宿一のお金持ちの女将さんだった。60年におよぶカネのためかた使い方の骨法をえんえんときいて再会を約して握手をして別れた。
こんな贅沢な旅をこんどは北の辺地でやりたいと思っていたら逸徳さんのおさそいをうけたのである。いしんでんしん、うてばひびく。
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