スキーの幹事役で信州からやっと帰ってきた。ずっとホテルで加藤周一『日本文学史序説』などをぱらぱら読んだり、NHK南米165日旅行や箱根駅伝などをぼんやりみていた。。
かえってきて早速、諸兄の句評を拝見することなく純な気持ちで猫師匠の秀句を味わっている。
みなさん今年もよろしくお願いします。
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・小春日や象は言はれたまま坐り
小春日ゆえにかえって何となくわびしくさみしく屈託を感ずる不思議な句である。
・短日や根付ばかりの骨董屋
根付きというのは値札ばかりという意味ですか
・蓑虫の揺れて犍陀多の孤独
せっかくの蜘蛛の糸がぷつんときれちゃった人ですね。
蓑虫は柔らかいがいがいと頑丈なつくりで木から決して簡単には落ちないのだが、冬風に揺れている様はなんともさみしいものだ。
・冬の滝電流弱くながれをり
非常に面白い感覚の持ち主。だんぜん特選。作者はときどき二重螺旋とか熱伝導とかベンゼン核とかで秀句をものするから理科畑のひとだろう。山口青邨、芝不器男など理科系のひとに俳句はあうらしい。
・山茶花の向かう山茶花忌日かな
わたしには意味不明
・鍵束をざらりと置きて年の夜
独り暮らしだとカギ束も増えるんだね。さらりとではなく、ざらりとおいたところに冷たい金属の質感がでている。
・鉄瓶の口の湯垢や雪催
拙宅ではでんきポットで喫茶しているので、鉄瓶、湯垢とくると昭和30年代の雰囲気あり。小生が昭和37年に札幌のおばさん宅にいったとき昭和壱拾六年関特演祈念と浮き彫りされた鉄瓶が石炭ストーブのうえで湯気を吹いていた。
とすると掲句の作者は傘寿を迎えているか。
・粉雪やレーニン選集括られて
井上ひさし『一週間』を読んだばかりなので、まことに味わい深い一句である。
『国家と革命』を読んだ中川先生が激しく感動していたが私にはよくわからんかった。レーニンがそれほど偉大ならなぜ次にスターリンがでてきたのか…と先生とやりあった頃が懐かしい。現代資本主義分析に『資本論』は不可欠となっているいっぽうで、レーニンが全面的に再評価される時代はもう来ないだろう・・・などとそんな雰囲気に「粉雪や」の句はぴったり。
中川先生がさみしく苦笑しているかもしれん
・雪激しポケットの中に繊き指
ほそき指ですか。白魚のようなほっそりとした血管のうきでた指ですか。
なんとも老いの官能をくすぐる川端康成的な世界だな。
作者はこの一句で新境地を切り開いた…
・おでんの卵逃げ来年は小吉
作者自製のおでんか。まことに飄逸な俳味躍如。
おでんの卵、割り箸でつまむのはたいへんなんだよな。
するりと卵に逃げられて来る年は小吉と達観した。この見事な境地に達するには小生なんぞまだ20年はかかりそう。
五能線のひなびた一杯飲み屋ではやくおでんをつつきたい
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