2012年10月13日土曜日

十月度仁句鑑賞・・・猫跨ぎ

  金子兜太が稔典句をどう評価していたかは知らないけれど、彼は俳句の革新を唱えていた人だから、こういう試みを悪くは言っていないと思うね。まあ、兜太先生がどう言おうと我々の感性で捉えればいいのでは。今や現代俳句をたばねる最後の人になったけど、そろそろ天に召される頃。彼亡き後、小物の群雄割拠という感じだな。

十月度仁句鑑賞。
・海峡を渡って行きし大花野
そうね、韃靼海峡を連想する。花野が本州へ南下して行ったということか。秋の花々は南下するんだね、なるほど。
・錠剤のアルミを抜けて夜長かな
アルミを抜けて夜長が面白いが、ちょっと意味が伝わりにくいとこがある。
・九月場所額の砂の零れけり
最後の一戦で額に砂を着けたのは日馬冨士だったか白鵬だったかどちらかな。力士にふと哀愁を覚える瞬間があるね。特選
・蚯蚓鳴く洗ひ終った鍋の底
作者独特の感性だね。
・穴惑ひお薬手帳忘れけり
穴惑いは自解してゆくときりがないとこがあるからこれはこれで了解。
・鳳仙花爆ぜて終らぬ戦後かな
いつまでも終わらぬ戦後という観念。まあ日本国憲法大事という読み方もあれば、もういいんじゃないという見方もある。人それぞれ。
・消息の薄くなりつつ石蕗の花
栽培種は勿論あるんだろうけれど、北海道に自生していたかな。見た記憶がない石蕗の花。そんなことに絡めて、人の消息を思っている。
・草紅葉三本立ての西部劇
大草原の西部劇を連想したということでしょう。疾駆する駅馬車。今頃三本立ての上映ってあるのかな。昔の思い出か。
・ふかし藷中は今でも戦時中
藷に戦後(我々は戦時中というより)の代用食を思う世代だね。
・赤ん坊の曖を出して寒露かな
曖は噯(おくび)のことね。ゲップ。寒露は二十四節気。北海道では初氷とも。冬到来の赤ん坊の表情。 準特選。

0 件のコメント:

コメントを投稿