2013年1月16日水曜日

「やなさって」  ・・褌子

  寒鴉やのあさってに来るといふ
   仁兵衛句から方言に関する重大な発見がつづいている。
   きのうからずっと佐渡島では「あさって」は使うが「しあさって」も「やのさって」「やのあさって」も使わんかった、一体なんて言ったんだろうと考え続けていた。繭玉も何て言ったんだろう? 猫跨ぎさん紹介の繭玉写真をみて「めだまさし」といっていたことをひょいと思い出した。さらに「あした→あさって→しあさって→やなあさって」と連記した逸徳さんの静岡方言をみて、そうだ! 佐渡島では、「あした→あさって→やなさって」と言っていたことを思い出したのである。しあさって=明明後日が「やなさって」であって、その次は佐渡ではない。ここでも静岡とずれていて省略もしているね。佐渡人は純でシンプル。
   北海道は内地人の集まりだから、私はつかった記憶がないが佐渡から渡道したひとは「やのあさって」をちょいととまどいながらも「はんかくさい」とか「しばれる」などと一緒に使い出したことだろう。江戸っ子の仁ちゃんもいつのまにやら道産子の仲間入りをしているわけだが、福島いわきでは明明後日は何と? 熊さん延岡では?
   ・・・・
   松本清張『砂の器』
   殺された被害者がトリスバーで飲んでいて東北弁をつかい、相手の若い男が「カメダは今も相変わらずでしょうね?」と被害者にたしかに言っていたというバーの女給の記憶、たったこれだけの証言で今西刑事がこつこつ執念深く犯人捜しをする。
   今西はカメダが人名の亀田でなく、秋田県に羽後亀田という地名があることをふと発見して、秋田まで捜査にいくのだが、からぶり。しかし、ついに東北弁いわゆるズーズー弁が、東北と正反対の西日本の島根県出雲地方の一部でも使われていることを発見する。さらに出雲地方に亀嵩(かめだけ)という地名があることを探しあてるのである。だが、亀嵩へ行っても何のてがかりもなかった・・・・
   いったいに日本海側の寒いところは、語尾ははっきり発音しない。私の生まれた故郷の部落名は「井内=いない」というところだが「いねぇ」と発音している。バーのホステスが隅っこに座っている客のぼそぼそ声の亀嵩(かめだけ)を「かめだ」と聞こえたとしても不思議でない。
   『砂の器』は昭和36年発表。映画化され、先年テレビになったが原作の味にはかなわない。ホステスを女給と書きトリスバーとよぶのも懐かしい。仁ちゃんと桑園寮でトリスは飲んだがサントリーホワイトは舐めた記憶もない。角瓶は拝んだこともなく、ダルマは高嶺の花だった。

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