2012年2月18日土曜日

映画『裸の島』・・・・褌子

  きのう『一枚のハガキ』をみたことを書いたが、新藤兼人監督の代表作はわたしは『裸の島』(1960)だと思っている。
  この映画は札幌のクラーク会館でみた。
  舞台は瀬戸内海の小島。『一枚のハガキ』の農地とおなじように水がない。住み着いた一家でイモをつくるだけ。音羽信子演ずる貧農のお嫁さんが隣の島まで水をもらいにいって苦闘する姿を無声のまま、えんえんと白黒カメラが追いつづける。子供も医者にみせられずに死なせてしまい、水桶をひっくり返してお嫁さんが炎天下の地面に突っ伏して啜り泣く場面があったが、私も涙がでてしまった。
  『裸の島』をとったのが縁で新藤監督と音羽信子は結婚し数々の名作をうみだしてゆく。
  新藤兼人は広島の山間部の大地主の息子だった。保証人になった親のせいで一家は破産し離散した。水がない山地の貧農がどんなに苦労したかを彼はいつも弱者によせるたぐいまれな温かい目でじっとみつめていたのだ。それに自分だけが生き残ってしまったという辛い戦争体験と広島の被爆者の姿をずっと直視してきた。日本の良心ともいえる監督に白寿もこえて長生きして欲しい。

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